あえてタイトルを付けるならば、im@s架空戦記のジャンルSF 06

【2】


穹窿穴と呼ばれる場所、慣れ親しんだ死地の名前を指し、時には墓標にさえなる。
当時、国の再生が困難、民への貧困は満ち。それら全ては、一瞬にして起きた砂による災害が原因であった。
そんな一度は解体されかけた国家が、復活し、人権を握るキッカケとなったのが、この穹窿穴の存在だ。
見映えよく言えば、穹窿穴とはプラトンアトランティス――つまり、穹窿穴の発生する砂漠の海の底には、沈んだはずの都市が、そのまま残っていることがあるという。
砂の海と地上、荒んだ場所で作物は育たず。ほとんどの都市がその形を保っていない。
けれど、人々が立ち入れない地下深くに、都市はそのまま残っている。と、公表し、それらの物資を提供するためにも、調査員が必要である。と、告げた。
下手に出ているような発言に見えて、それは武力を整えるためであり。実権を握りたかったにすぎない。
組織が形成されていき、機械による探査兵器を完成させ、そうして、また、年寄りが玉座に立つ時代へと、再生し始めたのだ。
そして、浸透地域という濃度の差違が発見され、本格的に「人では無理と判断、許可無く立ち入ること禁ず」という言葉を生み。
――見事、物資を受け、生き残るためには、国に従わなければならない、という。
そんな、素晴らしい国家が誕生した。



「小隊長。キミには、繭の回収任務を行ってもらう」
ペラペラの茶封筒と、あってないような存在の銀貨。
その二つを机に投げつける男。が、彼の発言と行動に反応を示さず、ただ、在るだけの女性が一人。
立ち尽くす彼女は、一部が半透明のウェットスーツのようなものを纏い、その上にオリーブ色のロングコートを羽織っている。
そのコートからは、鉄骨にゴム紐をぶら下げ、ゆらゆらと揺れる民たちのように、吊り下がる物がいくつもあった。覇気のない死体とは違い、金色に輝く勲章である。
「割ける人員は、出来るだけ君たちの隊だけで行ってもらいたい。供給兵であれば、そこらへんにいる日雇い労働者でも連れてこさせよう」
くいっ、と、男がこの部屋の窓を指す。3畳ほどの大きなガラスから、人々が大きな袋を運んでいる様が、2階であるここからでもハッキリと見える。
その行動を終えるや否や、彼が突然、笑い出す。その声は、羽虫の達と同じ、とても耳障りだと感じた。
飽きもせず、理解出来ない笑みに問うこともなく、彼女は、愛想の片鱗さえも見せなかった。
「決行は三日後、場所は美浜あたりにある穹窿穴。出撃のタイミングは、キミに一任する」
なぜ私が、ここまで沈黙し、従い、前方の上官を見つめるだけなのか。
別にふて腐れているわけではない。好機であり、それは、見つめるのではなく、見据える、といってもいい。
私は、この作戦が回ってくることを、数日前から知っていた。だからこその、沈黙なのだ。
保険とは、最期にあるべきものなのである。
だからこそ、私は、ここでカードを切った。
「マスター。今回の作戦に置いて、一つだけお聞きしたいことがあります」
私が揺らぐことはない、逆に問う。なぜ、揺らぐのかと。
「……申してみよ」
准将が返答する。けれど、その目は私を見ない。自身の用件は全て終えたのだろう。
私は、告げる。
「今回の最重要事項である、繭の回収――繭とは、一体何なのですか?」
普通のことだ。命を、穹窿穴に置き去りにするかもしれない任務に変わりはない。だからこそ、揺らぐ必要はない。
揺らぐのは私ではない、准将の方だ。
全てを理解しているからこそ、返す言葉さえも理解できていた。
「……キミに話すべきことではない。小隊長、任務だけを全うしろ」
下衆野郎が。









続き……頑張ってます。