im@s-SS「ジャンルSF」

あえてタイトルを付けるならば、im@s架空戦記のジャンルSF 16

一振りの刃が、得物を捕らえられず、啼く。 湿った腐葉土で、その音は聴こえないはずであった。この小さな空間の外での音など、まず動物の寝息さえ聴こえないのである、が。 ――それでも、その一振りは、殺意という見えない何かを含み。であるからこそ、錯覚…

あえてタイトルを付けるならば、im@s架空戦記のジャンルSF 15

「――Come va?」 女王が、潺のような音で問う。 その解は求めていない。知り得ていても、なぜか、彼女はそう聞いてしまう。 癖、そう片付けるのも悪くない。 けれどそうではない、彼女にとってそれは。 合図。 『4機、全て黒兜。最終目標――――停止』 受け止め…

あえてタイトルを付けるならば、im@s架空戦記のジャンルSF 14

『――以上が、自分の調べた結果となります』 皆が皆、隙間を埋めるように囲い合う。 機体同士の擦り合いは、決して無機物の抱擁を示唆するものではない――彼等が行っているのは、それとは異なる生存本能だ。 清水の機体への供給を行うため、全員で少しずつ、同…

あえてタイトルを付けるならば、im@s架空戦記のジャンルSF 13

童達の嗤い声と、それを囲む女郎達の嗤い声。 かごめかごめのような光景は、たとえ見ずとも、円を描いた遊戯などだと想像させる。 ――けれど、現実はそうではない。ただ、良いように思考が切り替えているのだ。 しかし、その惨劇をありのままに伝えること、そ…

あえてタイトルを付けるならば、im@s架空戦記のジャンルSF 12

二つの影が、鈍色の水滴を跳ねつつ交差する。 返り血のように、鮮やかな色にそれは飛び散り、芸術を侮辱するような行為であった。 けれど、その円舞こそが芸術に繋がっていた。 一方は細い剣一つで誘い、一方は小さき小刀でそれを受け弾く。 踏み込みが浅れ…

あえてタイトルを付けるならば、im@s架空戦記のジャンルSF 11

停止と消滅は、同時に死へと繋がる。 停止とは生命活動のことを指す、それが寿命であろうと、災害であろうと、予期せぬ事態であろうと。容易く死ぬことはできる。 消滅なんてものはもっと簡単だ、全てが焼き尽くされてなくなったとする、そうすれば、人は「…

あえてタイトルを付けるならば、im@s架空戦記のジャンルSF 10

【3】 「悪くない……好きよ、こう、身体が軽くなっていく感覚」 恋人のように、並列に連れ添うのに、彼女の声は、どこか遠く感じた。 黒の上に、うっすらと窪みが見え。触れることなくそれを通過する。その内部はやはり黒く、抜け出たと思った頃には、また窪…

あえてタイトルを付けるならば、im@s架空戦記のジャンルSF 09

「……もしもし、私だ」 声と同時、蓋を開かれたように、視界が白くなった。 その白に簡単に慣れることが出来ず、瞬きを数回することで、自身を調整する。 支給された連絡用の子機を左肩で支えながら、辺りをそのまま見渡す。 殺風景という言葉が、あまりにも…

あえてタイトルを付けるならば、im@s架空戦記のジャンルSF 08

夕映えに似た、命僅かな間接照明。 煌めきというよりも、揺らめいて。それは、部屋全体を照らすこともなく、ただ、その一生を全うしていた。 その真下にある地上は、管楽器が唸るような酒場ではない。 けれど、カウンター席が見える。 設けられた7席を埋める…

あえてタイトルを付けるならば、im@s架空戦記のジャンルSF 07

闊歩する場内で、自身の履き物は音を生まない。 支給された、雪原用のブーツ。彼女の見た目からすれば、ヒールの方が一層似合うことだろう。だからこそ、無音に不信感を抱くに違いない。 どこまでも白い廊下と壁。彩りは、労働者が映える窓硝子。 彼らは飼わ…

あえてタイトルを付けるならば、im@s架空戦記のジャンルSF 06

【2】 穹窿穴と呼ばれる場所、慣れ親しんだ死地の名前を指し、時には墓標にさえなる。 当時、国の再生が困難、民への貧困は満ち。それら全ては、一瞬にして起きた砂による災害が原因であった。 そんな一度は解体されかけた国家が、復活し、人権を握るキッカ…

あえてタイトルを付けるならば、im@s架空戦記のジャンルSF 05

その汚れこそが、愛すべき象徴であり、骨頂である。と、教義された。 他人のモノになるという、自覚。自身が物に成り下がるという、現実。 物は、常に物でしかない。烙印とは、そのために在る言葉なのだ、と。 番号という名前。型番という身体。 そんな私が…

あえてタイトルを付けるならば、im@s架空戦記のジャンルSF 04

地下迷宮である以上、その壁は土である。 腐葉土が混じった箇所もあれ、基本的にはパウンドケーキのようだ。 元の色が暗い以上、この空間も、薄暗いように造られている。 ならば火を灯し、視野を広げるしかない。ずっと昔のご先祖様が編み出した、文明の知恵…

あえてタイトルを付けるならば、im@s架空戦記のジャンルSF 用語集

用語集です。気づかない内に更新します。 ・異物(繭) ???・仮説大陸 砂漠の浸食により、大陸が縮まり、その災害までの原型を留めていないため、仮説とされ、国境を引いている。・仮説極東 日本のこと。現存する大陸は宮城県から島根県程度、離島のほとん…

あえてタイトルを付けるならば、im@s架空戦記のジャンルSF 03

轟く重低音。 名の如くそれは重く、身体を押し潰すような感覚に陥る。 けれど、それは気のせいなどではない。実際に、重力という目に見えないものが、のしかかっているのだ。耐える、というほどの圧力ではないにせよ、鬱陶しい、とさえ思う。 その場所で、彼…

あえてタイトルを付けるならば、im@s架空戦記のジャンルSF 02

様々なガラスが、その壁一面に貼られている。 原色が強めに見える。が、不自然な箇所に鮮やかな桃色が収まっていた。 不自然な、ステンドグラスである。 罪や幸福を象徴する、硝子の絵画に、ピンクの絵の具がぶちまけられたようであった。 そんな場所で、優…

あえてタイトルを付けるならば、im@s架空戦記のジャンルSF

・あらすじ 現存する地表の上に砂の覆われた世界。 その現状を受け入れられないまま、目覚めた春香。 平和で、トップアイドルを志していた日々が、一瞬にして非現実へと生まれ変わったのだ。 それを受け入れられないまま、ある一都市に保護され、生きる糧と…