あえてタイトルを付けるならば、im@s架空戦記のジャンルSF 14

『――以上が、自分の調べた結果となります』
皆が皆、隙間を埋めるように囲い合う。
機体同士の擦り合いは、決して無機物の抱擁を示唆するものではない――彼等が行っているのは、それとは異なる生存本能だ。
清水の機体への供給を行うため、全員で少しずつ、同じ稼働時間になるよう、調整をしつつパルスの結合を行っていた。
その間、清水は、自らが先へ向かった答えを、皆の前で示した。
『……資料として提供されたものと、大して変りはないですね』
マスターは、この任務を引き受けた際、一つの封筒を受け取っていた。
繭に関する調査報告書。
3枚の紙切れではあるが、多くの犠牲から生まれた文章である。

"大きい、重い、白い、内部には何かある……頭の本棚が空欄なのか、これまでの死人は"

マスターが、その報告書を読み、告げた感想である。
だが、事実目の当たりにして、自らの兵を働かせてみて、彼女は感じた。
『…報告書通りだ、同胞達を疑ったことを、後悔するよ』
頭を抱えている様が、春香にもなぜか見えた。
が、笑むことはなく、一言。
「それで、どうするすんですか? この繭は?」
即座に。清水が、
『人員と動力が足りない以上、戻るしかない、か』
正論としか言いようがない、当たり前の答え。
仕方のないことだ、誰も責めたりはしない。誰しも人は、自らの命こそを第一に考えて良いのである。
生存。
今優先すべき任務、それが、この二文字なのだから。
『……よし、とりあえずここを離れよう。春香、先陣を』
「は、はい!」
馬の轟きが如き駆動音を弾き、待機中だったパルスが赤色へと変色する。
皆が皆、春香と同じように機体を起動させる。赤いパルスが灯る様は、火の粉を身に纏う蛍のようであった。
砂漠の季節で蠢く虫などいると思えないが、この状況は、まさに虫の住処のようで。
どこか、女王の子供を守る、騎士のような気分であった。
『行くぞ』
マスターが、合図となる言葉を言い。
『――――了解』
その他が、対する合図を送る。
踏み出す地鳴と、その声はほぼ同時であった。
その光景は、空砲と共に、春香を追うように、連なって背中を見続ける競歩
追い抜くことがないのならば、それはとんだ茶番劇だ。
段々と遠退いていく巨大な異物、照らす灯りなどない以上、ソレは一緒で暗闇へと溶け込んだ。
見えなくなるのを最期に、春香は振り向くことを止める。
その、瞬刻の動作の最中。
「……?」
灯りが見えた。
その色は、春香達のパルスと同じ、赤。
「……! もしかして!」
宮田が呼んでくれた、供給兵であろうか。
その考えに安堵、いや、むしろ春香は強張った。
そう、こんなに早く応援が駆けつけるはずがない。
外に供給兵が待機しているわけでもないのだ、宮田が外で連絡できたとしても、最寄りの施設からでも、少なくとも一日は到達までに時間がかかる。
ならば、この光はなんだ?
幻、そう捉えるには明確とした輝きであった。
「  」
――春香が声を発しようとした、その一瞬。
まるで台詞を押し返すかのように、赤きカマキリが猛進してきた。